AI導入 ・ 2026.10.28

生成AIが「仕事に使えない」と感じたら、先に渡す3つのこと

生成AIが「仕事に使えない」と感じたら、先に渡す3つのこと

生成AIを仕事で活用しようと、試しに何か聞いてみた社長や管理職の方は少なくないでしょう。しかし、返ってきた答えが「どの会社にも当てはまる一般論だった」と感じていませんか。これでは、わざわざAIを使う意味がない、仕事には使えない、そう感じることもあるかもしれません。

全国の信用金庫の職員が取引先の中小企業から聞き取った調査(信金中金 地域・中小企業研究所、2026年10月15日公表)では、業務上で生成AIを「利活用している」と答えた会社は、従業員30〜39人の会社で47.2%、200〜300人の会社で71.6%でした。このように、生成AIを仕事で使っている会社は決して少なくありません。だからこそ、「使ってみたが一般論だった」というだけで立ち止まってしまうのは、非常にもったいないことです。

では、なぜAIの答えは一般論になってしまうのでしょうか。

結論:一般論が返ってくるのは、自社のことを渡していないから

AIは、私たちから渡された情報と、世の中の一般的な知識を使って答えを組み立てます。そのため、自社の詳しい状況や目指すものをAIにきちんと渡さなければ、「どの会社にも言える、無難で正しいこと」が返ってきやすくなります。これは、「プロンプト(AIへの指示文)」の言い回しや型が上手か下手かという話ではありません。AIに何を渡しているのか、という情報の中身が問題なのです。

AIに仕事で役立つ答えを出してもらうために、先に渡してほしいことが3つあります。

1つ目。何をしたいのか、そしてなぜそうしたいのかを渡しましょう。「なぜ」という部分が入ると、AIは何が課題で、どのような状態になれば成功なのかを深く踏まえた答えを返してくれやすくなります。3つのうち、この「なぜ」がいちばん効くと考えています。

2つ目。自社の事実を具体的に渡すことです。例えば、従業員の人数、お客様の層、いま会社で困っていること、これから特に力を入れたいことなどです。細かく正確な数字である必要はありません。AIに、自社の状況が伝わることが重要です。

3つ目。譲れない前提、つまり、できないことや変えられないことを渡してください。これを渡さないと、あとから「うちではできないな」「これは変えられないな」と、はじめから選べないような案が返ってきやすくなります。

具体的な例を見てみましょう。あなたが会社の求人文章を作成したいとします。

表①:AIに渡す情報で答えは変わる

渡すもの 足りない聞き方 伝わる聞き方
何をしたいか・なぜ 求人の文章を作って 営業の求人の文章を作りたい。応募は来るが面接のあとの辞退が多いので、仕事の大変なところも正直に伝えたい
自社の事実 (なし) 地方の会社で、お客様は地元の中小企業。営業は外回りが中心
譲れない前提 (なし) 給料の額はこの文章では変えられない。残業が少ないことは守りたい

この表のように、より多くの情報をAIに渡すと、返ってくる答えは大きく変わります。単なる「求人の文章の一般的な書き方」ではなく、「面接後の辞退を減らすために、仕事の大変なところをどう書くか」という目的に沿った、具体的な案が返ってきやすくなるでしょう。

渡すもので、返ってくる答えが変わる 何も渡さない 「求人の文章を作って」 3つを渡す 1 何をしたいか・なぜ 2 自社の事実 3 譲れない前提 どの会社にも言える答え 自社の仕事に合う答え 言い回しの上手下手より、渡しているものの違い

「プロンプトの型を覚えれば解決する」といった考え方でAIを使おうとすると、このような本質的な課題解決にはつながりにくいことがあります。まずは、AIに渡す情報の中身を見直してみましょう。

社員それぞれが、違う前提で聞いている

ここで、ある場面を想像してみてください。同じ会社の同じ求人文章について、2人の社員がそれぞれAIに相談するとします。

1人の社員は、「営業の求人文章を作りたい。面接後の辞退を減らすため、仕事の大変なところも正直に伝えたい。地方の中小企業で、営業は外回りが中心だが、給料の額は変えられず、残業が少ないことは守りたい」と詳しく伝えました。

もう1人の社員は、単に「求人文章を作って」とだけAIに依頼しました。

当然ながら、返ってくるAIの答えは大きく異なるでしょう。そして、AIに対する2人の社員の評価も、「使える」「使えない」と分かれやすくなります。

商工中金が取引先の中小企業に生成AIの導入状況を聞いた調査では、「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている」という回答が64.9%で最も多くなっています(商工中金、2026年3月31日公表・有効回答3,892社)。

AIの利用を個人に任せていると、同じ仕事であっても、社員それぞれがAIに渡す前提が違いやすい、と私たちは考えています。その結果、返ってくる答えもばらばらになりやすく、「AIは仕事に使える」と感じる人と「AIは仕事に使えない」と感じる人が社内に混在しやすい状況が生まれることがあります。

前提がそろうと、答えもそろう 個人に任せた場合 社員A 理由まで書く 社員B 一言だけ 社員C 前提だけ 答えがばらばらになりやすい 前提のメモをそろえた場合 社員A 同じメモ 社員B 同じメモ 社員C 同じメモ 同じ前提から答えが返る 目指すのは、誰が聞いても同じ前提から答えが返ること

ただし、個人に任せていること自体が悪いわけではありません。会社として先に決めておくことは、AI研修をしたのに使われない理由と、やり直す前の順番で扱っています。

目指したいのは、誰がAIに相談しても、同じ前提に沿った答えが返ってくる状態です。

3つを「前提のメモ」1枚にして、毎回最初に渡す

では、どうすれば誰が聞いても同じ前提から答えが返ってくるようになるでしょうか。そのための小さな一歩として、「前提のメモ」を1枚作成することをおすすめします。

このメモには、前章で説明した「何をしたいか・なぜ」「自社の事実」「譲れない前提」の3つを書き込んでください。そして、AIに相談するたびに、このメモの内容を毎回最初にAIに貼ってから、具体的な相談事を打ち込みます。一度作ってしまえば、毎回ゼロから前提を書き直す手間はなくなります。

さらに、同じ仕事を担当する人どうしで、同じ「前提のメモ」を使うようにすると良いでしょう。もし、仕事を進める中で新しい事実が分かったり、前提が変わったりした場合は、その都度メモに書き足していきましょう。そうすることで、チーム全体でAIに渡す情報の基準がそろい、より質の高い答えを引き出しやすくなります。

ただし、このメモに入れてはいけない情報もあります。それは、お客様や社員の氏名、連絡先、評価、給与といった個人情報です。どこまでの情報を入れてよいかを会社としてどう決めるかは、AI研修をしたのに使われない理由と、やり直す前の順番で扱っています。

答えを確かめて決めるのは人

AIを使うことへの不安を感じる社長や管理職の方もいるかもしれません。大同生命が全国の企業経営者に聞いた調査では、AIを利用する際の不安として、最も多かったのが「誤情報・内容の正確性」で49%でした(複数回答、この質問に答えた3,562社全体、大同生命、2026年)。AIの答えが常に正確とは限らない、という不安を持つのは自然なことです。

実際、個人情報保護委員会が2023年6月に出した注意喚起の中には、個人情報の扱いについての注意点として、「生成AIサービスでは、入力されたプロンプトに対する応答結果に不正確な内容が含まれることがある。」という一文があります(個人情報保護委員会、2023年)。

AIの答えは、あくまで私たちの考えを広げるための材料です。AIは、答えを出してくれるものというより、一緒に考える相棒です。そのため、AIが返してきた数字や事実は、必ず他の情報源と照らし合わせて確かめるようにしましょう。そして、その答えが自社にとって本当に正しいのか、お客様や社員にとって最善なのかを、最後に判断して決めるのは人です。

「速くする」と「良くする」、どちらも利益の話

AIを業務で使っている会社1,879社に理由を聞いた大同生命の調査では(回答の約半分が従業員5人以下の会社)、74%が「業務の時間短縮・効率化」、47%が「専門知識を補うため」、44%が「アイデア出しや企画のヒントを得るため」と答えています(複数回答、大同生命、2026年)。このデータから言えるのは、時間短縮・効率化に加えて、専門知識を補う・アイデア出しを挙げた会社も多かった、ということです。

この記事では、AIの使い方を「速くする」と「良くする」の2つに分けて考えます。どちらも会社の利益につながる話です。

「速くする」使い方は、決まった形のある作業に有効です。例えば、文章の最初の一稿を作成したり、会議のメモを整理したり、数字を集計したりする作業などがこれにあたります。AIがこれらの作業を肩代わりすることで、その分の人件費が下がることが期待できます。また、同じ人数のまま、一人が担える役割を広げられる可能性もあります。

一方、「良くする」使い方は、仕事の質や付加価値を高めることに貢献します。これは、考えの整理、多様な案を出し尽くすこと、足りない専門知識を補うこと、伝え方を練ることなどに役立ちます。AIとの対話を通じて、自分だけでは思いつかなかったような視点を得たり、より洗練された表現を見つけたりすることが期待できます。特に、言葉にしにくい抽象的なアイデアを具体化する際に、AIが思考を深める手助けをしてくれることもあります。

この2つの使い方を比較してみましょう。

表②:AIの「速くする」と「良くする」使い方

比べる観点 速くするために使う 良くするために使う
使い方の例 文章の最初の一稿、会議のメモの整理、数字の集計 提案の切り口を出し尽くす、伝え方を練る、足りない専門知識を補う
効きやすいところ 決まった形のある作業 考えの整理、言葉にしにくいことを言葉にする
見る数字 かかっていた時間、残業時間 提案が通った割合、やり直しの回数、お客様からの反応
「速くする」と「良くする」 速くする 人件費が下がる 一人が担える役割が広がる 決まった形のある作業 良くする 質が上がる 付加価値が上がる 考えの整理・伝え方 どちらも利益の話 どちらで使うかと、見る数字を先に決める

AIへの投資を判断する際には、まず「速くする」と「良くする」のどちらの目的でAIを使うのかを明確にし、その上で、どの数字を見て効果を判断するかを先に決めておくことが重要です。そうすることで、「AIに投資する価値があるか」を自社の具体的な数字で判断しやすくなります。

自社でAIをどこから使い始めるとよいかは、AI導入診断(無料・12問・約5分)で確かめられます。診断では、安心(情報の扱い)・業務・データ・人と定着の4つの視点で見ます。

よくある質問(FAQ)

Q1. どのAIを使えばいいですか?

A1. AIサービスを選ぶことよりも先に、まずは「前提のメモ」を作成し、AIに渡す自社の前提情報を決めることが大切です。サービスごとの機能差もありますが、まずは共通の前提でAIに問いかける仕組みを作ることが、成果につながる第一歩です。会社として使う環境をそろえる話は、AI研修をしたのに使われない理由と、やり直す前の順番で扱っています。

Q2. 前提のメモには、どこまで書けばいいですか?

A2. 1枚のメモに収まる量で十分です。重要なのは、「何をしたいか・なぜ」「自社の事実」「譲れない前提」の3つがきちんと含まれていることです。お客様や社員の個人情報は入れないでください。

Q3. 毎回メモを貼るのは手間ではありませんか?

A3. 一度「前提のメモ」を作ってしまえば、あとはAIに相談するたびにそのメモを貼り付けるだけです。毎回ゼロから状況説明や前提条件を書き出すより、はるかに手間は少ないでしょう。

Q4. AIに投資する価値があるかは、どう判断すればいいですか?

A4. まずは、AIを「速くする」目的で使うのか、「良くする」目的で使うのかを明確にしましょう。その上で、それぞれの目的に応じて、どの数字(例えば、かかっていた時間、提案が通った割合など)を見て効果を判断するかを先に決めておくことが重要です。

参考(一次情報)

関連するコラム

AIを入れたいが、
どこから手をつければいいのか分からない。

12の質問で、いまの状態と、どこから始めるとよいかを確かめます。

AI導入診断を受ける

無料・その場で結果が出ます