経営分析2026.05.22

出張理美容の規制が緩和へ サロンの外で稼ぐ4ステップと法令の注意点

出張理美容の規制が緩和へ サロンの外で稼ぐ4ステップと法令の注意点

「店内の売上だけでは、もう限界かもしれない」——人手は足りず、材料も家賃も上がり、近所には新しいサロンが次々とできる。そんな三重苦の中で、新しい収益の柱を探しているオーナー様は少なくないはずです。

そこに、業界の前提を少し動かすニュースが入ってきました。出張理美容(お客様のもとへ出向いて施術する形)のルールが、2026年に見直しに向けて動き出しています。これまで「病気や高齢、寝たきりの方」など限られた人だけが対象だった出張施術が、もう少し広い場面で認められる方向です。

ただし、ここで冷静になりたいのが「規制が緩んだから、すぐに新しい市場がドカンと開く」という話ではない、という点です。報道で見かける「179億円市場」という数字も、いくつか前提を確認したうえで受け止める必要があります(この点は後半で正直にお伝えします)。

本記事では、煽りを抜きにして、出張理美容を新しい収益源として仕込むための4つのステップ——メニュー設計・価格設計・法令対応・集客導線——を、現場の手順として整理します。今わかっている事実の範囲で、堅実に先行ポジションを取る方法を一緒に考えていきましょう。

出張理美容を収益源にする4ステップ STEP 1 メニュー設計 外でもできる施術を 棚卸しする STEP 2 価格設計 移動と時間を 価格に織り込む STEP 3 法令対応 資格・衛生・ 保健所への確認 STEP 4 集客導線 今いるお客様から 案内を始める 小さく始めて、ルールを守って、長く続ける

そもそも何がどう変わるのか?(2026年5月時点の事実整理)

まず結論から。「出張理美容の対象範囲を広げる方向で、政府が制度見直しを進めている」——これが現時点で確認できる事実です。

報道によると、政府は2026年4月21日の閣議で「理容師法施行令」「美容師法施行令」の一部改正を決定したと伝えられています。あわせて厚生労働省が、出張理容・出張美容の対象を広げる新たな通知を出す方向と報じられています。

これまでの出張理美容は、2015年(平成27年)以降の取り扱いで、おおむね次のような方に限られていました。

  • 病気・障害・高齢などで、サロンに来店するのが難しい方
  • 常時、育児や介護を行っていて来店が難しい方
  • 冠婚葬祭など、その場での施術が必要な特別な事情がある方

ここに、報道ベースで次のような場面が新たに加わる方向とされています。

  • 勤務環境の都合で、サロンの営業時間内に外出するのが難しい方への施術
  • 仕事をしながら育児・介護を担っていて来店が難しい方への施術
  • 演劇・演芸・テレビ出演などで、出演直前の施術が必要と認められる場合

つまり、これまで「特別な事情のある人だけ」だった出張施術が、「忙しくて店に来られない働く世代」や「撮影・舞台などの現場」にも広がる、という流れです。

出張理美容の対象範囲はこう広がる(報道ベース) これまで(2015年〜) 限られた事情の方のみ 病気・障害・高齢などで 来店が難しい方 常時の育児・介護で 来店が難しい方 冠婚葬祭など 特別な事情がある場合 見直し後(2026年〜の方向) これまでの対象に加えて 勤務環境で営業時間内の 来店が難しい方 仕事と育児・介護を両立し 来店が難しい方 演劇・演芸・テレビ出演で 出演直前の施術が必要な場合 ※最終的な対象範囲は厚生労働省の正式通知・管轄保健所の案内で必ず確認

今日からできること:まずは「自分の店の常連さんの中に、来店しづらくなった人がいないか」を思い出してみてください。産休育休に入った方、介護で時間が取れなくなった方、転職して生活時間が変わった方。その顔ぶれが、最初の出張のお客様候補になります。

注意:施行令の正確な条文・施行日・対象範囲の最終的な文言は、必ず厚生労働省の正式通知と、お住まいの都道府県・保健所の案内で確認してください。本記事は2026年5月時点の報道をもとにした整理であり、確定情報ではありません。


ステップ1:どんなメニューを作る?(自店の強みから逆算する)

最初にやるべきは、新しい機材を買うことでも、チラシを刷ることでもありません。「自分の店の何を、外でも提供できるか」を棚卸しすることです。

出張は店内と違い、設備も時間も限られます。だからこそ「全部やろう」とすると失敗します。おすすめは、施術を3つの軸で仕分けることです。

  1. 外でも品質を保てるもの(カット、メンズの整え、簡単なネイルケア、眉まわりなど)
  2. 持ち運びと衛生管理が現実的なもの(道具の消毒・使い捨て・お湯の確保ができるか)
  3. お客様が「わざわざ来てもらう価値」を感じるもの(時間指定・プライベート空間・付き添い不要など)

この3つすべてに当てはまるメニューが、最初の主力になります。たとえば「働く育児世代向けの、自宅での時短カット」「撮影前の現場ヘアセット」など、対象が想像できる形で名前を付けると、後の集客がぐっと楽になります。

今日からできること:自店のメニュー表を1枚印刷し、「これは外でもできる/できない」を赤ペンで丸を付けてみてください。丸が付いたメニューが、出張の最初の品揃えです。


ステップ2:値付けはどうする?(移動と時間を「見えるコスト」にする)

店内と同じ料金で出張を受けると、ほぼ確実に赤字になります。理由は単純で、移動時間・準備・後片付けという「見えないコスト」が乗るからです。

価格設計は、次の3つを足し算で考えると分かりやすくなります。

  • 施術料金(店内メニューを基準に)
  • 出張料(移動にかかる時間と交通費を、距離帯ごとに固定化する。例:エリアA・B・Cで段階設定)
  • 指名・時間指定の価値(早朝・夜間・お客様の都合に合わせる分の対価)

ポイントは、出張料を「お客様への負担のお願い」ではなく「プライベートな時間を買ってもらうサービス」として堂々と提示することです。安く受けるほど予約が増えて自分の首が締まる、という構造を最初に断ち切っておきます。

出張価格は3つの足し算で決める 施術料金 店内メニューを基準に 出張料 移動時間+交通費を 距離帯ごとに固定 指名・時間指定の価値 早朝・夜間など 都合に合わせる対価 出張価格 安売りしない 💡 同じエリア・同じ時間帯で2〜3件をまとめると 移動コストが分散して利益が残りやすい

加えて、1回の外出で複数件をまとめる「同じエリアの同じ時間帯に2〜3件」を意識すると、移動コストが分散して利益が残りやすくなります。

今日からできること:自分の時給を一度書き出してみてください。「1時間あたりいくら稼げていれば店が回るか」が分かれば、移動1時間にいくら乗せるべきかが自然と見えてきます。


ステップ3:法令はどう守る?(ここだけは慎重に)

出張理美容で最も大切なのが、ここです。集客やメニューの工夫はやり直せますが、法令違反は店の信用そのものを揺るがします。

報道ベースで分かっている範囲でも、出張施術には次のような点が関わってきます。

  • 施術者は理容師・美容師の免許が必要(無資格での施術はできません)
  • 施術現場で免許の携帯が求められる方向と報じられています(新通知後の運用)
  • 衛生管理の確保(消毒・清潔なタオル・器具の管理など、店内と同等の衛生水準が前提)
  • 出張が認められる対象・場面の範囲(誰にでも自由に出張できるわけではなく、認められた事情の範囲内である点は引き続き重要)

そして最も実務的に大事なのが、お住まいの都道府県・保健所への確認です。出張理美容の取り扱いは、国の通知をもとに各自治体が運用しています。届出や事前相談の要否、衛生面の具体的な基準は地域によって運用が分かれることがあるため、「うちの保健所はどう案内しているか」を直接確認するのが一番確実です。

なお、衛生・資格・税務に関わる個別の判断は、専門家(保健所・社会保険労務士・税理士など)への相談を前提にしてください。本記事は一般的な整理であり、個別の可否を保証するものではありません。

今日からできること:管轄の保健所のサイトで「出張理容 出張美容」と検索し、案内ページをブックマークしてください。電話で「出張施術を始めたいが、何を確認すればよいか」と一度聞いておくと、後の手戻りがなくなります。


ステップ4:どうやってお客様に届ける?(集客導線を先に作る)

メニュー・価格・法令の準備ができたら、最後は「知ってもらう仕組み」です。出張は店頭の通りすがり客が使えない分、入口を意図的に作る必要があります。

実際に効きやすいのは、いきなり新規を狙うことではなく、今いるお客様から始めることです。

  1. 既存客への案内:来店が減った常連さんに「ご自宅でも対応できるようになりました」と個別に伝える(最も成約しやすい)
  2. 店頭・予約サイトでの告知:「出張対応はじめました(対象・エリアはこちら)」と条件を明記して載せる
  3. 紹介の仕組み化:出張を使ったお客様に「同じ事情のお知り合いがいたら」と一言添える
  4. 対象が想像できる発信:「働く育児世代向け」「撮影現場向け」など、誰のためかが伝わる言葉でSNS・サイトに残す

ここで気をつけたいのが、法令上認められる対象・場面の範囲を超えた打ち出しをしないことです。「誰でも出張します」という表現は、ルールの面でも信頼の面でもリスクになります。あくまで「こういう事情の方に対応できます」という形に整えておきましょう。

今日からできること:来店間隔が空いてしまった常連さん3名をリストアップし、「もし出張できるとしたら使いたいですか?」と聞いてみてください。1件のリアルな声が、メニューも価格も磨いてくれます。


「179億円市場」をどう受け止めるべきか

最後に、冒頭でお約束した「数字の正直な話」です。

報道や業界の発信の中で、「出張・訪問美容の市場は、業界全体で179億円規模」という数字を見かけることがあります。ただし、調べてみると、この179億円は規制緩和によって新たに生まれる市場の大きさではなく、訪問美容市場が将来(2034年ごろ)に到達すると見込まれる予測値として語られているもののようです(年平均で数パーセント成長という前提)。出典も一次統計というより、業界関係者の試算・発信に基づくものと見られます。

ここで注意したいのは、この179億円はあくまで業界全体の市場規模の予測値だということです。規制が緩んだからといって、その金額が個々のサロンの売上として今すぐ反映されるわけではありません。大事なのは数字の大小ではなく、働く世代や撮影現場など、これまで取りこぼしていた層に手が届くようになるという構造の変化のほうです。市場の数字に踊らされず、自店の足元の常連さんから一歩ずつ広げる——それが、煽られずに先行ポジションを取る現実的な道です。


まとめ:小さく始めて、ルールを守って、長く続ける

出張理美容の規制見直しは、人手不足・コスト高・競争激化の三重苦の中で、サロンが店の外に収益源を持つチャンスになり得ます。ただし、それは「魔法のスイッチ」ではありません。やることは地道です。

  • ステップ1:自店の強みから「外でもできるメニュー」を選ぶ
  • ステップ2:移動と時間を価格に織り込み、安売りしない
  • ステップ3:資格・衛生・対象範囲を守り、必ず保健所に確認する
  • ステップ4:今いるお客様から、条件を明記して案内を始める

そして数字(179億円など)に振り回されず、足元の一人のお客様から始めること。これが、規制の変化を本当の収益に変えるための、いちばん確実な順番です。

Archibleは、こうした制度の変化を「自店の収益設計」に落とし込むお手伝いをしています。一人で抱え込まず、まずは「うちの場合、何から始められるか」を一緒に整理するところから始めてみませんか。


よくある質問(FAQ)

Q1. 出張理美容に資格は必要ですか? A. はい。出張であっても、理容・美容の施術には理容師・美容師の免許が必要です。無資格者による施術はできません。また、報道ベースでは、新しい通知の運用後は施術現場での免許の携帯が求められる方向とされています。詳細は厚生労働省の正式通知と管轄の保健所でご確認ください。

Q2. 保健所への届出は必要ですか? A. 出張理美容の取り扱いは、国の通知をもとに各都道府県・保健所が運用しています。届出や事前相談の要否、衛生面の基準は地域によって運用が分かれることがあります。始める前に、必ず管轄の保健所に「出張施術を行いたいが、何を確認すべきか」を直接ご相談ください。

Q3. 誰にでも出張して施術できるようになるのですか? A. いいえ。規制の見直しは「対象となる場面を一定広げる」方向であり、「誰にでも自由に出張できる」ことを意味するものではありません。2026年5月時点の報道では、勤務環境上来店が難しい方、仕事と育児・介護を両立している方、撮影・舞台などで直前の施術が必要な場合などが新たな対象として挙げられています。最終的な対象範囲は、正式な施行令・通知の文言で確認する必要があります。

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