経営分析2026.07.30

【2026年】最低賃金1,176円・+55円で美容室とネイルサロンが10月までに数える3つの数字——賃金は4.9%、カット代は1.1%

【2026年】最低賃金1,176円・+55円で美容室とネイルサロンが10月までに数える3つの数字——賃金は4.9%、カット代は1.1%

【2026年】最低賃金1,176円・+55円で美容室とネイルサロンが10月までに数える3つの数字——賃金は4.9%、カット代は1.1%

2026年7月28日、厚生労働省の中央最低賃金審議会が、2026年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申しました。全国加重平均で1,176円、引き上げ額の目安は55円、引き上げ率は4.9%です。多くの地域で10月ごろに発効すると見込まれています。

ただ、慌てる話ではありません。決まったことなので、順番に数えれば済む話です。一方で気になるのは、サロンの料金がこれと同じ速さでは上がっていないことです(2026年6月のカット代は前年同月比+1.1%)。この差が利益にどう効くのか、そして10月までに何を数えておけばいいのかを整理します。

先に結論をお伝えします

2026年度の最低賃金は、全国加重平均で1,176円(引き上げ額の目安55円・引き上げ率4.9%)が目安として答申されました。多くの地域で10月ごろに発効する見込みです。

一方、サロンの料金はそこまで上がっていません。総務省の消費者物価指数(2026年6月)では、カット代が前年同月比**+1.1%、ヘアカラーリング代も+1.1%**です。つまり、人件費が上がることは決まっていて、料金はまだ追いついていないという状態です。

だから10月までに数えるのは、次の3つです。

数字 何を確かめるか どこを見れば分かるか
最低賃金の計算に「入る」賃金だけで、スタッフの時給を出し直す 給与明細
その時給を「1時間あたり」の物差しで見る シフト表
出している求人票の時給が、新しい下限に対してどの位置にあるか 現在出している求人票

どれも、給与明細・シフト表・求人票があれば今月のうちに出せます。新しく何かを買う必要はありません。

10月までに数える3つの数字 計算に入る賃金だけで 時給を出し直す 給与明細を見る その時給を 1時間あたりで見る シフト表を見る 求人票の時給が 下限に対してどこか 出している求人票を見る 手元の書類だけで出せます。買うものはありません

何が決まったのか——1,176円、そして10月

答申されたのは、全国加重平均で1,176円、引き上げ額の目安55円、引き上げ率**4.9%**です。引き上げ額の目安は、都道府県をA・B・Cの3ランクに分けて示されています。

ランク 対象 引き上げ額の目安
Aランク 6都府県(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪) 54円
Bランク 28道府県 56円
Cランク 13県 56円

ここで押さえておきたいのは、これはあくまで「目安」だということです。この目安をもとに各都道府県の地方最低賃金審議会が審議し、その結果を経て都道府県労働局長が実際の金額を決定してから適用されます。多くの地域で10月ごろに発効すると見込まれていますが、金額も時期も、最終的には自分の都道府県のものを確かめる必要があります

賃金は4.9%、カット代は1.1%——この差が利益を削ります

もう一方の数字を見ます。総務省の消費者物価指数(2026年6月)です。

項目 前年同月比
最低賃金の引き上げ率(目安) +4.9%
カット代 +1.1%
ヘアカラーリング代 +1.1%
パーマネント代 +1.4%
エステティック料金 +1.0%
(参考)物価全体(生鮮食品を除く総合) +1.6%

賃金の上がり方が4.9%で、料金の上がり方が1.1%。この差が意味するのは、同じお客様の数・同じ売上でも、売上に対する人件費の割合が上がるということです。売上の数字は去年と変わらないのに、残る利益だけが薄くなります。

そして、賃金はすでに上がり始めています。厚生労働省が2026年3月24日に公表した令和7年賃金構造基本統計調査では、理美容師の月給は前年より1万4,300円増でした。ただしこの調査は従業員10人以上の規模の企業が対象で、一人サロンや小規模のサロンが多いこの業界の実態をそのまま表すものではありません。

なお、この記事では値上げの是非や進め方には立ち入りません。値上げの設計そのものは別の記事「美容室が値上げできない本当の理由」(https://archible.jp/blog/issue-145 )で扱っているので、そちらに譲ります。ここで扱うのは、10月までに手元で数えておくことだけです。

上がり方の差が、そのまま利益の薄さになります 最低賃金(2026年度の目安) +4.9% 1,176円(+55円) 10月ごろ発効の見込み カット代(2026年6月) +1.1% 物価全体は +1.6% 料金は追いついていない 同じお客様の数・同じ売上でも、残る利益だけが薄くなります

数字①スタッフの時給を「計算に入る賃金だけ」で出し直す

最低賃金と比べるときに間違いやすいのが、支払っている全額で比べてしまうことです。厚生労働省の「最低賃金の対象となる賃金」では、実際に支払われる賃金から次のものを除外したものが対象になると示されています。

最低賃金の計算に入らない賃金
臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
午後10時から午前5時までの間の労働のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

とくに見落としやすいのは、最後の精皆勤手当・通勤手当・家族手当です。ここが除かれるため、「手当を合わせれば足りているはず」という感覚と、実際の計算が食い違うことがあります。

やることは1つです。給与明細を開いて、上の表に当てはまるものを外した金額で時給を出し直す。それだけです。なお、賃金の扱いは個別の事情で変わりますので、最終的な確認は社会保険労務士や、お住まいの都道府県の労働局へお願いします。

数字②その時給を「1時間あたり」で見る

最低賃金は時間額で決まります。ですから月給や日給で支払っている場合も、1時間あたりに直さないと比べられません

そして「1時間あたりで見る」というのは、最低賃金の確認だけに使う物差しではありません。1時間あたりに直すと、スタッフごとの働き方も、シフトの組み方も、営業時間の使い方も、同じ物差しの上に並びます。これまで「月の人件費」でしか見ていなかったものが、時間の単位で比べられるようになる、ということです。

ここで手間の話も1つ。1時間あたりで見た結果、事務や在庫管理のような裏方の作業に時間が取られていると分かることがあります。そこを軽くできれば、残業が減ってその分の人件費が下がりますし、同じ人数のままでも一人が担える役割を広げられます。手間が減ったことが、人件費の減少か、担える役割の広がりのどちらかにつながって、はじめて利益の話になります

ただし、自店で1時間あたりいくら必要になるかは、店の規模・スタッフの構成・メニューの組み方で変わります。ここは共通の数字が出せないところなので、自店の数字に置き換えて考える必要があります。

数字③求人に出している時給を、新しい下限と並べてみる

3つ目は採用の入口です。厚生労働省の職業安定業務統計から、求人賃金を時給に換算した基準値(2026年3月公表)を見てみます。

職種 求人賃金(時給換算)
理容師 1,476円
美容師 1,315円
全職業平均 1,289円
その他の美容サービス 1,215円
エステティシャン 1,212円
ネイリスト 1,172円
理美容補助者 1,142円

全国加重平均の目安1,176円と並べると、ネイリスト(1,172円)と理美容補助者(1,142円)は、すでに同じか下の水準にあります

ここは2つの注意が必要です。第一に、この数値は求人賃金を時給に換算した基準値で、実際に支払われている額ではありません。第二に、最低賃金は都道府県ごとに決まります。上の表は全国平均と全国の求人賃金を並べただけなので、自分の県の新しい金額で確かめる必要があります。なお求人賃金そのものにも地域差があり、この統計では全国基準を100としたとき最も高い東京都が111.4、最も低い青森県が85.4で、都市部が高く地方が低い傾向が出ています。

実務としては単純な話です。出している求人票の時給が新しい下限に近ければ、その金額のままでは募集を出せなくなります。10月までに書き換えるものがあるかどうか、今のうちに見ておく、ということです。

職種別の求人賃金(時給換算)と、全国平均の目安1,176円 全国加重平均の目安 1,176円 理容師 1,476円 美容師 1,315円 全職業平均 1,289円 その他の美容サービス 1,215円 エステティシャン 1,212円 ネイリスト 1,172円 理美容補助者 1,142円 ※求人賃金を時給換算した基準値。最低賃金は都道府県ごとに決まるため、自分の県の額で確かめます

この3つは、今月のうちに出せます

必要なものは、すでに手元にあります。

  • 給与明細 — 計算に入らない賃金を外した金額で、時給を出し直す
  • シフト表 — 月給・日給を1時間あたりに直す
  • 出している求人票 — 記載している時給を、新しい下限と並べる

私たちアーキブルも人を雇う側なので、毎年この時期に同じ計算をしています。私たちの場合は、先に時給を出し直してから、その金額で1年分の人件費がどう動くかを見る、という順番でやっています。

最低賃金が上がるのは決まったことです。だから、慌てて料金やシフトを動かす前に、まず数える。数え終われば、何をどれだけ動かす必要があるのかが金額で見えます。動かす順番はそのあとで決められます。

よくある質問(FAQ)

Q1. うちは歩合制(正社員の月給)なので、最低賃金は関係ないのでしょうか。

雇用しているスタッフについては、支払い方の形にかかわらず、働いた時間で割って1時間あたりに直したうえで比べる、という考え方になります。歩合や月給だから対象外になるという整理ではありません。ただし個別の事情で扱いが変わりますので、最終的な確認は社会保険労務士や、お住まいの都道府県の労働局へお願いします。

Q2. 手当を含めれば足りていると思うのですが。

最低賃金の計算には入らない賃金があります。精皆勤手当・通勤手当・家族手当、賞与、時間外・休日・深夜の割増賃金、臨時に支払われる賃金などです。これらを外した金額で比べるため、「手当を合わせれば足りているはず」という感覚と実際の計算が食い違うことがあります。まずは給与明細で、外すものを外した金額を出してみてください。

Q3. 10月までに、何から手をつければいいですか。

記事の3つを順番に。①給与明細から、計算に入る賃金だけで時給を出し直す ②シフト表を使って1時間あたりに直す ③出している求人票の時給を新しい下限と並べる。この順番なら、前の答えが次の材料になります。どれも手元の書類だけで始められます。

Q4. 結局、値上げすべきなのでしょうか。

この記事では値上げの是非を扱っていません。人件費が上がることが決まっていて料金が追いついていない、という事実をお伝えしただけです。値上げの設計や伝え方は別の記事(「美容室が値上げできない本当の理由」)で扱っているので、そちらをご覧ください。まずは3つの数字を出してから考える順番をおすすめします。

Q5. 自分の県の金額はいつ分かりますか。

今回答申されたのは全国加重平均の目安です。これをもとに各都道府県の地方最低賃金審議会が審議し、都道府県労働局長が金額を決定してから適用されます。多くの地域で10月ごろに発効すると見込まれていますが、正確な金額と時期は、お住まいの都道府県の労働局の案内で確かめてください。

参考(一次情報)


3つを出したあと、「では自店では何をいくら動かすのか」を決めるところからが本題です。アーキブルでは、無料の経営診断でこの計算をご一緒しています。

無料経営診断はこちら:https://archible.jp/diagnosis

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