人材育成2026.07.09

復職美容師という母集団——免許保有者の56.4%は、いま現場にいない

復職美容師という母集団——免許保有者の56.4%は、いま現場にいない

復職美容師という母集団——免許保有者の56.4%は、いま現場にいない

先に結論:採用の穴は「新しく採る」だけでは埋まらない

美容サロンのオーナー様、採用で「人がなかなか採れない」「募集しても応募がない」と頭を悩ませていませんか? 人材不足は、もはや一時的な課題ではなく、サロン経営を揺るがす喫緊の課題となっています。

先に結論をお伝えします。この採用の穴は、「新しく人を採る」という一本足打法だけでは、ますます埋まりにくくなっています。

現在、美容師免許を持つ人の56.4%が、いま現場を離れています(ホットペッパービューティーアカデミー調べ)。これだけの有資格者が「休眠」している事実から、私たちは採用の新しい可能性を見出すことができます。それは、新規募集を増やすのと並行して「一度現場を離れた方に、もう一度戻ってきてもらう」入口を持つ、という発想です。

ただし、これは決して「安く早く穴を埋める駒」として復職者を使うということではありません。ブランクや生活の事情を抱える彼らが戻ってこられるよう、時短勤務や少ない日数での出勤など、サロン側が受け皿となる"戻れる条件"を設計することとセットで、初めて力になります。安易な期待は禁物ですが、現状を打開する現実的な一手として、この「もう一つの採り方」をぜひ知ってください。

免許を持つ人の半数以上が、現場を離れている

改めて数字を見てみましょう。ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、美容師免許を持つ人の実に56.4%が、いま現場で働いていません。就業率は43.6%にとどまっています(美容サロン就業実態調査2026)。この就業率は、3年間で41.7%→42.6%→43.6%と緩やかに改善してはいますが、まだまだ多くの有資格者が現場の外にいる状態です。

現在、実際に就業している美容師の数は約56万人です(厚生労働省 衛生行政報告例)。この数字の裏には、免許を持ちながら現場を離れている、巨大な母集団が存在しているのです。

さらに驚くべきことに、免許を取得したものの、一度も美容師として働いたことがない人が22.0%もいるという事実も指摘されています(美容サロン就業実態調査2026)。これは、美容師という仕事に魅力を感じながらも、何らかの理由で現場への一歩を踏み出せない人たちが、これだけいるということでもあります。

免許を持つ美容師の56.4%は、いま現場にいない 現場を離れている 56.4% 働いている 43.6% 就業している美容師は約56万人(厚生労働省 衛生行政報告例)。 その裏に、免許を持ちながら離れている大きな母集団がある。 出典:ホットペッパービューティーアカデミー 美容サロン就業実態調査2026/厚生労働省 衛生行政報告例

なぜ現場を離れるのか——早い段階で辞める理由

これほど多くの美容師が現場を離れているのはなぜでしょうか。 特に問題なのは、新卒入社から早い段階で離職してしまうケースです。新卒入社3年未満の離職率は42.5%にも上り、20代全体で見ると69.3%が離職しているというデータもあります(美容サロン就業実態調査2024)。

彼らが現場を離れる背景には、主に以下のような不満やギャップがあると言われています。

  • 給与への不満: 労働時間や責任に見合う給与が得られないと感じる。
  • 労働時間の長さ: 拘束時間が長く、プライベートな時間が取りにくい。
  • 休日の少なさ: 休みが少なく、リフレッシュや家族との時間が持てない。

こうした「辞める理由」は、実は「戻ってこられる条件」の裏返しでもあります。つまり、現場を離れた人たちが「もし、あの条件なら戻りたい」と感じるポイントに他なりません。

もし、これらの「辞める理由」を放置したまま、ただ「人を採りたい」と入口だけを広げても、それは穴の空いたバケツに水を足すのと同じです。せっかく採った人がまたすぐに辞めてしまい、採用にかかった時間もお金も無駄になってしまいます。

辞める背景 戻ってもらう時に見直す視点
給与への不満 働き方に見合う報い方を考える
労働時間の長さ 時短・時間の柔軟さ
休日の少なさ 少ない日数でも戻れる設計

「新しく採る」一本足が、中小サロンで行き詰まる理由

多くの中小〜零細サロンでは、常に「新しい人を採る」ことに多くの時間と労力を割いています。しかし、この「新規採用」一本足のやり方は、いま多くのお店で行き詰まりを見せています。

新規採用には、求人媒体への掲載費用、面接や選考にかかる時間、そして採用後の教育コストと、時間もお金も大きくかかります。しかも、募集を出せば必ず採れるという保証もありません。今の時代、経験者採用は難しく、新卒採用も限られた人数の奪い合いになっています。

特にスタッフの人数が少ない零細サロンの場合、一人でもスタッフが抜けると、その影響は非常に大きいものです。売上や利益が大きく削られるだけでなく、残されたスタッフへの負担が増え、連鎖的な離職につながるリスクもはらんでいます。

一方、「一度現場を離れた復職美容師」を受け入れるという視点には、新規採用にはないメリットがあります。

まず、復職者は美容師免許を持ち、技術の土台があります。もちろんブランクの慣らし期間は必要ですが、ゼロから技術を教える新規採用に比べれば、教育の負担はかなり軽く済みます。 また、採用にかかる時間も短くできる可能性があります。未経験者に比べれば、美容師という仕事への理解や、サロンワークの基礎知識もあるため、ミスマッチのリスクも比較的低いと考えられます。

観点 新規採用 復職美容師の受け入れ
技術の土台 ゼロから育てる すでにある(教育の負担が軽い)
採用までの時間 長くなりやすい 短くできる可能性
向いている条件 フルタイム・現役同条件 時短・少日数など柔軟な受け皿
注意点 母集団の奪い合い ブランクの慣らし・生活事情への配慮

このように、復職美容師の受け入れは、新規採用が厳しさを増す中で、中小サロンが人材を確保するための「もう一本の道」になりうるのです。

復職者は「駒」ではない——戻ってくる人の本音

では、現場を離れた美容師は、どのような気持ちで復職を考えるのでしょうか。ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、復職の動機の上位には「資格を生かした仕事の方がよいと再認識したから(21.7%)」や「その仕事が好きだから(20.4%)」が挙げられています(美容サロン就業実態調査2024)。

このデータからわかるのは、復職を考える美容師は、単にお金のためだけでなく、「好きだった仕事」「せっかく取った資格」といった、仕事の意味ややりがいを重視している傾向があるということです。

また、復職者の7割以上は、離職から5年未満で現場に戻ってきています(美容サロン就業実態調査2024)。これは、ブランクが長すぎないうちに「もう一度働きたい」と考える人が多いことを示唆しています。

しかし、彼らの多くは、離職期間中に結婚や出産、育児、介護など、それぞれの生活事情を抱えています。そのため、現役のスタッフと同じフルタイム勤務や、画一的な休日の条件では、なかなか現場に戻ることができません。

もし、貴店の求人条件が「現役のスタッフとまったく同じフルタイム・週休固定・指名前提」に固定されているとしたら、この大きな層と接点を持つ機会を失っているかもしれません。

「復職者を受け入れる」という考え方は、時短勤務や少ない日数でも働けるような、柔軟な働き方の入口を用意することから始まります。あわせて、ブランクを埋める慣らし期間や既存スタッフの協力といった、迎える側の労働環境の整備・受け入れ態勢を整えることも、会社やお店に求められます。ただし、具体的な条件や賃金、シフトの設計は、お店の規模や客層、既存スタッフの状況によって千差万別です。画一的な正解はなく、自店の状況を踏まえて設計していく必要があります。

入口を広げても、受け皿がなければ「また離れる」 自店 働き続けられる環境 新規採用+復職 =入口を広げる 給与・時間・休日の不満を 放置=穴から漏れて再び離れる

よくある質問(FAQ)

Q1. 「半分が休眠」なら、すぐ採れるということですか?

いいえ、残念ながらそうではありません。56.4%という数字は「制度上は現場に戻りうる美容師の母集団の大きさ」を示しています。すぐに働ける待機列があるわけではありません。その多くは、ブランクの不安や、育児・介護などで時短勤務を希望するなど、生活上の制約を抱えています。数字は機会の大きさを示しますが、採用の難しさが魔法のように消えるわけではありません。

Q2. 復職美容師は安く雇えますか?

そのような発想はおすすめしません。「安く早く穴を埋める駒」として扱うことは、結果として双方にとって不幸な結果を招きかねません。条件のミスマッチや、技術の慣らし期間への配慮を欠けば、せっかく戻ってきてくれた人が再び辞めてしまい、また休眠状態に戻ることになりかねないからです。復職者の方にも、正当な対価と働きがいを提供することで、長期的な戦力として定着してもらうことを目指しましょう。

Q3. 復職者を受け入れれば、採用の悩みは解決しますか?

復職者の受け入れは、採用に困っているサロンにとって非常に有効な「入口の一手」ではありますが、万能薬ではありません。もし、給与や労働時間、休日への不満が大きく、人が早く辞めていく職場環境をそのままにして入口だけ広げても、それは穴の空いたバケツに水を足すのと同じです。復職者の受け入れは、彼らが「ここでなら働き続けられる」と感じるような環境の見直しとセットで初めて、その効果を発揮します。

Q4. まず何から始めればいいですか?

まずは、自店の求人が「現役とまったく同じ条件(フルタイム・週休固定・指名前提など)」に固定されていないかを、一度見直すことから始めてみましょう。時短や少ない日数でも働ける余地が本当にあるのか、どんな条件なら受け入れられるのかを、具体的に考えるところからが第一歩です。ただし、具体的な条件や賃金、シフトの設計は、各店の事情によって大きく異なります。自店の状況をしっかり踏まえて設計する必要があります。

参考(一次情報)


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